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内部監査の質問例集:実践的なヒントと回答を引き出すコツ

内部監査の質問例集:実践的なヒントと回答を引き出すコツ

組織のパフォーマンス向上やリスク管理の強化に役立つ「内部監査」。しかし、監査を行う側も受ける側も「どんな質問をすればいいのか」「どう答えればいいのか」で迷うことが多いのではないでしょうか。

この記事では、質問が持つ意味や活用ポイントを整理した上で、現場で役立つ質問例を幅広くご紹介します。内部監査について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

1. 内部監査で質問が重要な理由とは?  

内部監査で質問が重要な理由とは? 

内部監査というとチェックリストでの点検が思い浮かぶ方も多いでしょう。しかし、チェックリストはあくまで「確認すべき項目が網羅されているか」を確かめるためのツールです。実際の現場の状況や潜在的なリスクを深く掘り下げるには、やはり質問が必須となります。

ここでは、チェックリストと質問の役割の違いや、適切な質問が監査の精度に与える影響を解説します。

※内部監査全体の流れをつかみたい方は、まず以下の記事をご参照ください。
内部監査とは?基本の役割・目的から手順まで徹底解説

チェックリストと質問の違いと役割  

チェックリストは「必要事項の確実な網羅」を担うツールです。例えば、規程通りに承認印が押されているか、書類は正しく保管されているかといった最低限の確認を漏れなく行えます。

一方、質問は現場の実態を把握し、深掘りするために活用するのがポイントです。大手監査法人のガイドラインでも、両者を組み合わせることで「網羅性」と「深度」を両立させることが推奨されています。

※チェックリストの作り方を詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご参照ください。
内部監査チェックリストの作り方は?項目例と活用ポイントを徹底解説

適切な質問が内部監査の精度を高める理由  

形式的な点検を超えて「本当に運用されているのか」「形骸化していないか」を見極めるためには、当事者へのヒアリングが不可欠です。質問を通じて現場の声を拾うことで、単なるチェックだけでは見逃しがちなリスクや課題に気付ける可能性が高まります。

専門サイトの内部監査事例でも、質問を軸とした内部監査が最終的な精度や信頼度を大きく向上させます。

質問の質が内部監査結果に与える影響  

内部監査の結果を左右する大きな要素は「質問の質」ともいわれています。的確な質問ができれば、問題の根本原因を突き止めるだけでなく、改善策の候補を引き出すことも可能です。

曖昧な質問に終始すると、監査結果の活用が限定的になり、組織の課題を正しく見つけにくくなります。質問の設計力は、内部監査全体の価値を高める上でも最も重要なポイントのひとつです。

※OAGビジコム 内部監査担当者のコメント

内部監査チェックリストだけで運用状態を判断しようとすると、書類が整備されているかどうかくらいしかわからなくなってしまいます。

私たちも現場で『どんな課題を感じているのか?』『それをどう工夫して乗り越えているのか?』を直接ヒアリングすることで、潜在的なリスクをいち早く発見できると考えています。

2. 内部監査で使える質問例:基本編  

内部監査で使える質問例:基本編 

ここからは、実際にどのような質問が有効なのか、基本的なところから見ていきましょう。

特に組織体制の整備状況や手順の遵守度合いなど、内部管理体制の根幹を担う要素については、重点的に確認する必要があります。

組織体制・ルール遵守を確認するための質問  

  • 「役割分担は明確に定められていますか? 具体的な責任者はどなたでしょうか?」
  • 「コンプライアンスに関する教育は定期的に行っていますか? その内容や頻度は?」

これらは、大手監査法人のガイドラインでも推奨される質問例です。

組織の基盤となる体制やルールが整っていない場合、どんなに優秀な人材がいても効果が出にくいです。権限や責任があいまいなまま進めると、統制の甘さによってリスクが大きくなります。

手順やプロセスの実行状況を確認する質問  

  • 「標準作業手順書に沿って業務を進める際、実際にどのような手順で進めていますか?」
  • 「各プロセスの承認や記録は、誰がどのタイミングで行っていますか?」

手順書に書かれていることと、実際の運用に差異があるのは珍しいことではありません。こうした質問で現場の具体的な行動を聞き出すことで、ルールと実態のギャップを発見しやすくなります。

データや記録を深掘りする質問  

  • 「会計データや生産実績など、異常値が出た場合はどのように処理・報告されていますか?」
  • 「データの整合性や追跡フローを確認する体制はありますか? トラブル発生時の対応策は?」

数字やデータに強いチームでも、異常値の原因究明が不十分なことがあります。内部監査で深掘りすることで、根本的な課題(例:システムの不具合や手動集計のミス)を特定しやすくなるでしょう。

3. 内部監査で使える質問例:応用編  

内部監査で使える質問例:応用編

基本的な確認を経たうえで、さらに一歩踏み込んだ視点を持つと、より効果的に問題抽出や改善策の検討ができます。

ここでは、改善ポイントを引き出す質問やリスク管理面の掘り下げ方など、応用的な質問例を紹介します。

改善ポイントを引き出すための質問  

  • 「日常業務を進める上で、非効率だと感じる手順やツールはありますか?」
  • 「その問題が起きる原因として、どんなことが考えられますか? なぜそうなっているのでしょう?」

現場担当者が持つ“生の声”こそ、潜在的な改善チャンスが隠されています。なぜ(Why)を繰り返すことで、表面的な回答を掘り下げ、根本原因に迫ることが可能になります。

リスク管理・コンプライアンス面を掘り下げる質問  

  • 「リスク評価やコンプライアンス違反が起きた場合、どのルートで報告されるのが一般的ですか?」
  • 「トップマネジメントはどの程度リスク管理に関与していますか? 周知や対策の指示などは?」

リスク管理が形だけで終わっていないかを確かめるには、具体的な報告経路や責任者、社内周知の状況を聞くことが重要です。対策が実際に機能しているかどうかを深掘りすることで、組織の成熟度を測ることができます。

部門横断的な視点を得るための質問  

  • 「サプライチェーンや情報システムをまたいで行う業務では、どの部門が主導権を持っていますか?」
  • 「複数部署にまたがる課題が発生した場合、責任や対応策はどのように決まりますか?」

部門が増えるほど連携の難易度も上がります。人によって認識が異なっていたり、責任所在が曖昧だったりすることが多いため、部門横断的な質問は重要です。問題が顕在化しないうちに、横断的な管理体制を把握するのが賢明でしょう。

4. 質問を活用して課題解決を促すには  

質問を活用して課題解決を促すには

内部監査で得た回答をどう活かしていくかも大切なポイントです。質問の仕方やタイミング、対象者とのコミュニケーションの取り方を工夫することで、実際の行動変化につなげやすくなります。

質問の組み立て方とタイミングの工夫  

質問は「導入 → 掘り下げ → 要約」の段階を踏むと効果的です。まずは相手が答えやすい一般的な内容から入り、徐々に詳細を問いかけることで、より具体的な情報を得やすくなります。

また、適切なタイミングで要点をまとめると、相手の整理にも役立ち、内部監査人も事実を正確に把握しやすくなります。

被監査対象者とのコミュニケーションの取り方  

被監査対象者が「責められている」と感じると、必要な情報が得にくくなります。あくまで組織全体の改善を目的とした建設的なアプローチを心がけましょう。

具体的な事例を示しながら質問すると、相手が理解を助けると同時に、より明確な回答を引き出すきっかけにもなります。

質問結果をアクションにつなげるプロセス  

質問の回答を整理・分析して終わりではなく、具体的な改善策やリスク対策に落とし込む必要があります。そのために、内部監査後のフォローアップやPDCAサイクルを回す仕組みを整えることが重要です。

内部監査の目的は「単なる点検」ではなく「課題を発見・解決し、組織を強化すること」ですので、得た情報を的確にアクションに結びつけましょう。

まとめ:内部監査で効果的な質問を活用して組織を強化しよう

内部監査を通じて得られる情報は、組織をレベルアップさせる宝の山でもあります。チェックリストで漏れなく点検したうえで、現場で何が起こっているのか、どんな課題を抱えているのかを深掘りするためには「質問」を的確に使いこなすことがカギです。

質の高い質問は、単なる不備の洗い出しだけでなく、潜在的な改善余地やリスクの早期発見にも役立ちます。本記事で紹介した基本的・応用的な質問例を参考にしながら、貴社の内部監査を「単なる点検」から「組織を強化する仕組み」へと進化させてみてください。

もしチェックリストの作成や運用方法および効果的な質問でお困りの際は、ぜひOAGビジコムまでご相談ください。貴社の状況や課題に合わせた最適なチェックリストや効果的な質問を作成したうえで、内部監査を支援させていただきます。

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