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内部監査の年間計画とは?内部監査計画書の作成ポイント・スケジュールの立て方を徹底解説

内部監査の年間計画とは?内部監査計画書の作成ポイント・スケジュールの立て方を徹底解説

「内部監査の年間計画はどう立てればいいのか分からない」「何を盛り込めばよいのか悩んでいる」と感じている企業の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、内部監査の年間計画を初めて策定する方はもちろん、計画を見直したい方にも役立つよう、スケジュールの立て方、テーマの選定方法、計画書に含めるべき項目を具体的に解説していきます。

※内部監査の目的や基本的な進め方などの前提知識を知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
内部監査とは?基本の役割・目的から手順まで徹底解説

内部監査の年間計画とは?その目的と重要性

内部監査の年間計画とは?その目的と重要性

内部監査の年間計画とは、1年間でどの部門や業務を、いつどのように内部監査するかをあらかじめ整理したものです。リスクに応じて優先順位をつけることで、限られた人員や時間を有効に使い、効率的かつ効果的な内部監査を実現できます。

また、内部監査の内容や時期が事前に明確になるため、関係部門は準備しやすく、経営層への説明や合意形成もスムーズに進みます。

年間内部監査計画策定の基本ステップ

年間監査計画策定の基本ステップ

年間内部監査計画を効果的に策定するためには、リスクに基づく優先順位付けと、組織全体との連携が欠かせません。ここでは、年間内部監査計画策定の4つの基本ステップを紹介します。

リスクに基づく内部監査テーマの選定

リスクベースアプローチとは、形式的に対象を並べるのではなく、業務ごとのリスクの大きさに応じて内部監査の優先順位を決める方法です。

リスクアセスメントでは、ヒアリング、自己点検、内部牽制機能評価の結果などを参考に、対象業務に潜むリスクを洗い出します。このとき、既に対策が取られているかどうかにも注目し、「残余リスク(=リスク-既存対策)」の観点で評価することがポイントです。

内部監査テーマを選定する際は、事業への影響度、過去の不備の有無、金額の大きさといった観点から、優先順位を明確にしておきましょう。

経営層の意見・過去の内部監査結果の反映

次に、内部監査の目的や方向性を明確にするため、経営層や監査役会へのヒアリングを行います。事業戦略や重点施策との連携を図ることで、内部監査を経営に役立つツールとして位置づけることができます。

さらに、前年度の内部監査結果や改善状況のフォローアップを踏まえることも大切です。たとえば、前年に指摘が多かった領域や、改善が不十分だった部門は、今年度も重点的に確認すべき対象になります。

内部監査対象範囲とリソースの決定

内部監査の対象範囲を決める際は、部門・拠点・業務プロセスの3軸で整理し、全体像をつかむことが基本です。そのうえで、限られた人員や時間の中で、どこに重点を置くかを判断します。

必要なリソースとしては、内部人材の確保だけでなく、外部専門家の活用や内部監査人の研修計画も含めて検討しましょう。

※内部監査人の教育方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
現場力が上がる内部監査人の教育法とは?社内研修のポイントやコツも解説

関係部門との調整とスケジュール化

計画を実行に移すには、関係部門との事前調整が不可欠です。特に、決算期・繁忙期・システム移行時期などを避けて内部監査の時期を調整することで、現場の協力を得やすくなります。

実務上は、たとえば「1か月前に内部監査予定を通知し、1週間前に具体的な計画を共有する」など、余裕を持ったスケジュール設計が望ましいでしょう。必要に応じて「監査役や会計監査人との連携(=三様監査)」も計画に組み込むと、重複を避けつつ相互補完的な監査体制が整います。

※OAGビジコム 内部監査担当者のコメント

内部監査計画を作るうえで一番悩むのは、全体のバランスです。リスクが高い部門ばかり追うと、定期確認すべき基盤業務が抜けがちになります。現場の繁忙期を考慮しながら、毎年柔軟に見直すのが成功のポイントです。

内部監査年間スケジュール例(3月決算企業の場合)

内部監査年間スケジュール例(3月決算企業の場合)

内部監査を計画的に進めるには、年間を通じたスケジュールの全体像を押さえることが大切です。

ここでは、3月決算の一般的な企業を想定した内部監査の年間スケジュール例を紹介します。

前年度末:年間内部監査計画の策定と承認

2月〜3月頃には、次年度の年間内部監査計画を作成し、経営層や監査役会の承認を得ます。この段階で、リスク評価の見直しや関係部門との初期調整も並行して行います。

4〜6月:予備調査と内部監査計画の周知

新年度に入り次第、内部監査対象部門へ計画内容を通知します。業務フローや関連資料を確認し、必要に応じてヒアリングを実施するなど、実施準備を整える期間です。

7〜12月:本監査の実施(現場監査)

現場での内部監査を集中的に実施する期間です。内部監査テーマに沿って、文書確認やヒアリング、プロセス観察などを行います。複数の部門を順次回る形式が一般的です。

翌年1〜2月:改善指摘事項のフォローアップ監査

本監査で指摘した事項の改善状況を確認します。改善が不十分な場合は追加対応を求め、必要に応じて再監査を行います。

翌年3月:内部監査結果の取りまとめと報告

年度末には内部監査結果をまとめ、経営層や監査役に報告します。1年を通じた内部監査の総括として、全社的なリスク傾向や改善状況を整理し、次年度への改善提案にもつなげます。

内部監査計画書に盛り込むべき主な項目

内部監査計画書に盛り込むべき主な項目

内部監査の年間計画を策定したら、それを文書化した「内部監査計画書」にまとめます。これは単なるスケジュール表ではなく、内部監査の目的や範囲、体制などを明文化し、社内で共有する重要な資料です。

以下の項目を含めることで、実効性の高い計画書になります。

内部監査の目的・方針

なぜ内部監査を実施するのか、その目的を明記します。「リスクの早期発見」や「内部牽制機能の有効性評価」など、経営方針との関係性も含めて記載しましょう。

内部監査の対象(拠点・部門)と範囲

内部監査の対象となる部門や拠点、業務プロセスを具体的に列挙します。同時に、何を監査し、どこまでを対象にするのか範囲を明確にします。

内部監査の方法・体制

内部監査をどのように実施するか、使用する手法(文書確認、ヒアリング、現場視察など)と、内部監査チームの体制(主査、副査など)を記載します。外部専門家の関与がある場合はその旨も記載します。

内部監査スケジュール

年間の内部監査実施スケジュールを月別に記載します。確定ではなく「予定」として記載することで、柔軟な対応が可能になります。

内部監査報告会とフォローアップ体制

内部監査後の報告フロー(提出先や期限)、指摘事項への対応方法、フォローアップのタイミングや方法などを記載します。改善が完了するまでの追跡体制を明示することで、計画の実効性が高まります。

内部監査計画立案の手法

内部監査計画立案の手法

内部監査の年間計画では、すべての内部監査対象を一律に扱うのではなく、自社の状況に応じて優先順位をつけ、適切な内部監査テーマを選定することが求められます。

ここでは、実務でよく使われる代表的な3つの手法を紹介します。

ローテーション方式(定期的に全拠点を内部監査)

一定の期間(例:3年や5年)で、全拠点や部門を順番に内部監査する方式です。公平性と網羅性があり、全体を計画的にカバーできるのが特長です。

一方で、リスクが低い部門にもリソースを割く必要があり、効率面ではやや課題があります。多拠点企業やグループ会社に適した手法です。

パラメータ方式(リスクスコアに基づく選定)

各部門に「リスクスコア(例:重要度×金額×不備件数)」を設定し、数値化した優先度に基づいて内部監査対象を決定します。客観性が高く、リスクベース監査との相性が良いのが特長です。

ただし、スコア設定の基準が不明確だと属人的になりやすく、初期設計に工夫が必要です。

ヒアリング方式(管理職へのインタビュー)

部門長や管理職へのヒアリングを通じて、現場の課題や不安をもとに内部監査対象を決める方法です。

潜在的なリスクや経営課題とのつながりを拾いやすい一方、定量的な裏付けが取りづらいため、他の方式と併用するのが理想的です。

中期内部監査計画(3〜5年)の活用

中期内部監査計画(3〜5年)の活用

内部監査は通常、1年単位の年間計画に基づいて実施されますが、内部監査対象が多い企業やリスク変動が大きい環境では、3〜5年単位の中期的な視点で内部監査全体を設計することが効果的です。

ここでは、中期内部監査計画の活用方法とメリットを解説します。

中期計画で内部監査対象を計画的にローテーション

限られたリソースのなかで全社をバランスよくカバーするには、中期的なローテーション計画が有効です。

たとえば「重要部門は毎年内部監査を行い、それ以外の部門は3年で一巡」といった設計により、網羅性と効率の両立が可能になります。毎年すべてを内部監査する必要はなく、中期でローテーションを組むことで全体最適を図ります。

年度計画との連動と定期見直し

中期計画はあくまで「設計図」であり、年度ごとの実行計画(年間計画)と連動させて運用します。リスクの高まりや組織変更があれば、柔軟に見直し、年度単位で優先順位を調整することが重要です。

中期と年度の2層構造で内部監査を計画することで、抜けや偏りを防ぎつつ、変化にも対応できる実践的な体制が整います。

まとめ:効果的な年間内部監査計画を策定しよう

まとめ:効果的な年間監査計画を策定しよう

内部監査の年間計画は、単なるスケジュール表ではなく、企業のリスク管理や業務改善を戦略的に支える重要なフレームワークです。リスクベースでテーマを選定し、中長期的な視点を持って内部監査を実施することで、組織全体の生産性や透明性を高めることができます。

OAGビジコムでは、内部監査のアウトソーシングや計画立案のご支援を無料相談から承っております。貴社の業種・規模・課題に合わせて、リスク評価から年間計画の策定、実行支援までをトータルでご提案可能です。

「社内に内部監査の専門人材がいない」「どこから手をつければよいかわからない」といった悩みをお持ちの担当者様は、ぜひ一度お気軽に弊社までご相談ください。

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