監査
内部監査規程の策定手順をわかりやすく解説!

「内部監査規程」を整備したいと考えているものの、
「そもそも何を盛り込めばいいのか分からない」
「形式だけになってしまい、実態と合っていない」
そんなお悩みを抱える企業担当者は少なくありません。
そこで本記事では、グローバル内部監査基準において内部監査規程で定めるべき事項として示されている内容から、内部監査規程の策定ステップまでを解説します。
Contents
内部監査規程とは

内部監査規程とは、内部監査部門への負託事項、組織上の位置づけ、指示・報告関係、仕事の範囲、業務の種類及びその他の明細事項を含む正式な文書です。
多くの企業では、内部監査規程に定義される内部監査の役割が一般的な内容にとどまりがちです。しかし、グローバル内部監査基準では、取締役会や最高経営者と直接話し合い、その企業独自の経営環境に合わせた具体的な負託事項(内部監査の権限、役割、および責任)を明確にすることが求められています。これにより、内部監査が経営層の期待に応え、より戦略的な役割を果たすことが可能になります。また、内部監査への負託事項を明確にすることにより、内部監査部門の運営や日々の業務活動の基盤となります。これにより、内部監査部門は自らの存在意義を再認識し、組織全体への貢献度を高めることができるでしょう。
内部監査規程整備の意義
内部監査規定は、内部監査部門がその職務を遂行するために必要な記録、人及び物的資産に対する制約のないアクセスを保証するものです。また、内部監査部門の指示・報告関係および組織上の位置づけを明確にし、取締役会の決定事項として文書化することにあります。これにより、内部監査部門が独立した立場で、客観的かつ公正に監査業務を遂行できる基盤を確立します。
内部監査規程の要求事項(グローバル内部監査基準6.2)
グローバル内部監査基準において、内部監査規程で明確に定められるべき事項として示されている事項は以下の通りです。
要求事項
内部監査部門長は、内部監査部門の少なくとも以下の内容を明記した内部監査規程を作成し、維持しなければならない。
- 「内部監査の目的」
- 「グローバル内部監査基準」を順守することへのコミットメント
- 負託事項-提供する業務の範囲と種類、及び経営管理者による内部監査部門の支援に関する取締役会の責任と期待事項を含む
- 組織上の位置づけと指示・報告関係
内部監査部門長は、提案した内部監査基本規程を取締役会及び最高経営者と協議し、内部監査部門に対する理解と期待が正確に反映されていることを確認しなければならない。
内部監査規程に含まれるべきその他主たる記載事項

グローバル内部監査基準において、内部監査規程に含まれるべき事項として示されている内容は以下の通りです。
- 部門運営上の指示・報告責任(人事管理及び予算の承認、内部監査部門長の経費の承認、内部監査部門長のパフォーマンスレビュー)
- 客観性と独立性への防御措置
- 防御措置を再評価する頻度
- 無制限のアクセス
- 取締役会及び最高経営者とのコミュニケーションの性質とタイミング
- 監査プロセスにおける経営管理者とのコミュニケーションに関する期待事項(意見の相違の取り扱い方法を含む)
- 品質のアシュアランスと改善
- 取締役会及び最高経営者が特に指定した事情を含む承認事項
内部監査規程の策定ステップ
内部監査規程の策定ステップは、主に以下の4ステップに分けられます。
ステップ1:策定準備と目的の明確化
規程の策定は、内部監査部門長が主体となり、プロジェクトの責任者を明確にすることから始めます。この段階の最も重要な目的は、内部監査規程が果たすべき役割と、その根底にある理念を明確に定義することです。
内部監査の目的と負託事項の協議
内部監査の目的を定義する際には、組織のガバナンス目標との整合性を図る必要があります。特に、負託事項(内部監査の権限、役割、および責任)については、内部監査部門長は取締役会及び最高経営者と協議します。
この協議を通じて、以下の事項を明確に定めます。
内部監査の役割と期待事項
取締役会が内部監査部門に対してどのような価値創造を期待しているか、その範囲と種類を具体的に定義します。
適切な権限とリソース
内部監査部門がその役割を効果的に果たせるよう、取締役会が適切な権限とリソース(予算、人員、情報アクセスなど)を付与することを明確にします。
この協議プロセスは、規程の承認を得るための単なる形式ではなく、取締役会が内部監査の独立性と権限を真に理解し、支援することを確約するための重要なステップとなります。
ステップ2:基本事項の草案作成
以下の基本事項を明確に記載した規程の草案を作成します。
・内部監査の目的
内部監査が組織の価値創造にどう貢献するかを明確に述べます。
・「グローバル内部監査基準」を遵守することへのコミットメント
規程の冒頭で、グローバル内部監査基準を遵守する意思を明記します。これにより、監査の品質と信頼性を保証します。
・負託事項
▶ 内部監査が提供する業務の範囲と種類(保証業務、コンサルティング業務など)を詳細に記述します。また、取締役会に対して、内部監査活動への支援(予算、リソース、情報提供など)に関する期待を明確に示します。
▶ 組織上の位置づけと指示・報告関係について、内部監査部門が組織内で独立した立場にあることを明確にし、内部監査部門長が誰に報告するかを具体的に定めます。この関係図は、監査の独立性を確保する上で不可欠です。
ステップ3:主要記載事項の盛り込み
グローバル内部監査基準で示されている、その他主たる記載事項を規程に盛り込みます。このステップでは、監査活動の実務的な側面を規定します。
▶ 部門運営上の指示・報告責任:内部監査部門の人事管理、予算の承認、部門長の経費承認、パフォーマンスレビューのプロセスを定めます。これにより、部門運営の透明性と効率性を高めます。
▶ 客観性と独立性への防御措置:監査人の独立性を守るための具体的な措置(例:監査対象部門との兼務禁止、利害関係の事前申告など)を記述します。また、これらの防御措置を再評価する頻度も明記し、継続的な改善を促します。
▶ 無制限のアクセス:内部監査部門が業務遂行に必要なすべての記録、人、物的資産に対し無制限にアクセスできる権利を明記します。これは、内部監査の有効性を保証する上で最も重要な項目の一つです。
▶ コミュニケーションの性質とタイミング:取締役会、最高経営責任者、監査対象部門とのコミュニケーション方法、頻度、内容を具体的に定めます。意見の相違が生じた際の対処方法も記載することで、円滑な監査プロセスを確保します。
▶ 品質のアシュアランスと改善:内部監査部門の品質を維持・向上させるためのプロセス(例:内部・外部品質評価、継続的な専門能力開発など)を明記します。
▶ 承認事項:内部監査計画、予算、品質評価結果など、取締役会や最高経営者の承認が必要な事項をリストアップします。
ステップ4:承認と維持・管理
策定した内部監査規程を、取締役会に提出し、正式な承認を得ます。承認後も規程は定期的に見直し、必要に応じて改訂を行います。この継続的なプロセスにより、規程が常に組織の実情や最新の基準に合致していることを保証します。
内部監査規程の様式
以下は、内部監査人協会(IIA)の内部監査規程に関するプラクティスガイドにおける雛形から、項目のみを抽出したものです。なお、内部監査規程にはこれを必ず適用しなければならないという決まった様式はありません。グローバル内部監査基準においても、内部監査規程は組織体特有の側面に対応するために、内部監査規程をカスタマイズすべきであるとしています。
〇〇〇社内部監査規程 目的(内部監査部門) 「グローバル内部監査基準」を遵守することへのコミットメント 負託事項 権限 独立性、組織上の位置付けと指示・報告関係 負託事項及び内部監査基本規程の変更 取締役会による監督 内部監査部門長の役割と責任 倫理とプロフェッショナルリズム 客観性 内部監査部門の管理 取締役会及び最高経営者とのコミュニケーション 品質のアシュアランスと改善のプログラム 内部監査業務の範囲と種類 取締役会承認日: 承認/署名 内部監査部門長 日付 取締役会議長 日付 最高経営責任者(任意) 日付 |
まとめ:自社に合った内部監査規程を整備し、効果的な内部監査を実施しよう

企業の規模や事業特性に合った内部監査規程を整備することは、内部監査規程を形骸化させないようにするためには不可欠です。この規程は、内部監査部門が独立性を保ち、効果的に機能するための指針となります。自社の状況に合わせた規程を策定し、組織のガバナンス強化につなげましょう。
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