監査
内部監査とは?基本の役割・目的から手順まで徹底解説

企業の経営環境が複雑化する中で、リスク管理や業務の透明性がますます重要視されています。その中核を担うのが「内部監査」です。
本記事では、内部監査の基本的な役割から実務の流れ、経営への活かし方までを丁寧に解説していきます。
Contents
1. 内部監査は何をする?基本的な役割と目的

内部監査は、企業にとって非常に身近で重要な機能です。
この章では、まず「内部監査とは何か」という基本的な定義と、それが企業にもたらす役割や目的について整理していきます。
内部監査は、自社を点検して改善につなげる健康診断
内部監査は、自社内に設置された専門部門や担当者が、経営活動や業務プロセスを独立・客観的に検証する健康診断です。決算書類などの財務情報はもちろん、人事・総務・営業など多岐にわたる部門の実態を把握し、問題があれば改善を促します。
企業規模を問わず、社内に潜むリスクや無駄を早期に発見・是正することで経営効率を高めることが期待できます。
内部監査の目的:不正を防ぎ業務を改善する
内部監査の主な目的は、不正や誤謬を未然に防ぐと同時に、業務の有効性や効率性を高めることです。具体的には、以下のような効果が期待されます。
- 不正やミスの予防・発見:会計不正、情報漏洩、横領などを予防・早期に発見する
- 業務効率化:業務フローの無駄や重複を見直し、生産性を高める
- 内部管理体制の強化:法令順守・リスク管理体制を整え、経営を安定化する
これらを通じて、企業が持続的に成長するための基盤づくりを行うのが内部監査の最大の役割です。
2. 外部監査・監査役監査と何が違う?

「監査」という言葉はひとくくりにされがちですが、「外部監査(財務諸表監査)」「監査役監査」そして「内部監査」では、それぞれ担う役割や視点が異なります。
ここでは、それぞれの違いを簡単に整理します。
内部監査と外部監査(財務諸表監査)の違い
外部監査は、公認会計士や監査法人など社外の第三者が実施する監査です。主に財務諸表の正確性や開示内容の妥当性を検証し、投資家や株主など社外ステークホルダーが企業を信頼できるようにすることが目的です。
一方、内部監査は社内の改善を目的として実施されるため、企業が抱える業務面の課題や組織風土まで掘り下げて検証できる点が強みです。
内部監査と監査役監査の違い
監査役監査は、会社法にもとづいて選任された監査役が取締役の職務執行を監査します。違法行為や重大な不正がないかを監視し、問題があれば是正を促すのが主な役割となります。
一方、内部監査はより幅広い視点で、各部署の具体的な業務プロセスや運用ルールまで見直し、改善策の提案を行う点に特徴があります。
3. 内部監査では何をチェックする?代表的な監査領域

内部監査が対象とする領域は非常に幅広く、会社によって重点を置くポイントが異なります。ここでは代表的な5つの監査領域を例示します。
経理プロセスの監査(経理監査)
財務諸表の作成や経理業務が正しく行われているかを確認します。売上計上や経費処理、在庫管理などが会計基準や社内規程に沿っているか、帳簿間の数値に齟齬がないかを確認し、不正やミスを未然に防ぎます。
業務プロセスの監査(業務監査)
購買から販売まで、企業活動を支えるあらゆる業務プロセスが効率的かつ正確に運用されているかをチェックします。マニュアル通りに作業が実施されているか、無駄な作業や属人的な対応がないかなどを確認し、問題点が見つかれば是正を提案します。
ITシステムの監査(システム監査)
社内の情報システムが業務を適切に支えているか、セキュリティ面も含めて監査します。アクセス権限の設定やデータのバックアップ体制、システム障害が起きた場合のリカバリ手順などを点検し、ITリスクを最小化するための改善策を検討します。
法令遵守の監査(コンプライアンス監査)
企業が労働基準法や下請法、業種特有の法規制などを順守し、適切な体制で業務を行っているかを検証します。万が一違反が見つかれば重大な信用失墜につながるため、早期発見・予防の観点から慎重に内部監査を行います。
その他の監査領域(ISO認証対応など)
ISO認証(品質管理や環境管理など)の更新や取得を目指す企業では、内部監査がその審査対応の要になります。認証基準に沿って運用されているかを点検し、書類整備や手順の見直しなど具体的なアクションを提案します。
4. どんな企業に内部監査が必要?実施が求められるケース

内部監査は法律上の義務ではありませんが、企業の規模や業態、上場の有無によっては必須に近い役割を果たします。また、不正リスクや業務改革を重視する企業にも積極的な導入が望まれます。
大規模・上場企業では内部監査が不可欠
上場企業や大規模企業は、投資家や社会的な信用確保のため、内部監査体制を整えることが事実上求められています。
金融商品取引法による内部統制報告制度(J-SOX)などで、管理体制の整備やリスク管理が必須となり、その一環で内部監査部門を設置するケースが大半です。
中小企業では内部監査は必要か?
経営者が直接現場を把握できる段階を超えたら、簡易的な形でも内部監査を導入する意義が大きいでしょう。
特に財務管理が複雑化したり、外注・取引先が増えたりする段階で、内部監査が問題の早期発見と対処に役立ちます。
5. 内部監査の進め方5ステップ

内部監査を効果的に実施するには、明確なプロセスを踏むことが大切です。ここでは、一般的な5つのステップを紹介します。
① 内部監査計画の立案
まずは内部監査の目的と範囲を設定し、どの部署や業務をどんな方法で内部監査するかを計画します。リスクの高い分野を優先しつつ、限られた内部監査リソースをどこに割くかを決めることがポイントです。日程やチーム体制の確保、被監査部門との調整もこの段階で行います。
② 予備調査(事前ヒアリング・内部監査チェックリストの作成)
事前に必要な資料を収集したり、対象部門の責任者や担当者へヒアリングを実施し、業務内容や課題の仮説を立てます。どのような視点で本調査を進めるかを具体的にイメージできるように準備しておくことで、監査の質が向上します。この段階で、内部監査チェックリストを作成します。
③ 本調査(現場での監査実施)
計画と予備調査をもとに、実際に現場へ赴いて検証作業を行います。書類やデータの突き合わせ、システムログの確認、担当者への追加インタビューなど、多角的に情報を集めるのが重要です。発見した問題点は監査調書として記録し、後の評価・報告に備えます。
④ 結果の評価と報告
集めた情報を基に内部監査結果を整理・分析します。違反や不正の有無だけでなく、改善が期待される領域とその優先順位を明確化し、経営層や被監査部門へフィードバックします。報告書には改善提案や根拠となる事実も記載し、納得感のある内容にまとめることが大切です。
⑤ 改善指導とフォローアップ
内部監査で指摘した問題点に対して被監査部門が具体的な改善策を検討・実行するよう促します。改善計画やスケジュールが適切かどうかを確認し、必要に応じてアドバイスを行いながらフォローアップを継続します。再発防止の仕組みづくりや、改善内容の定着をサポートすることも重要です。
6. 内部監査を活かすには?押さえておきたいポイント

内部監査は、ただ問題を指摘するだけの「チェック機能」に終始すると十分な効果を発揮できません。経営に活かすための視点や運用の仕方が大切です。
以下で紹介する3つのポイントを押さえておきましょう。
経営全体を見渡して課題を洗い出す
業務プロセスの局所的な問題だけでなく、経営目標や組織全体の動きを俯瞰しながら内部監査を行うことで、本質的な課題を発見しやすくなります。
部門をまたいだ連携不足や経営戦略とのズレなど、大きな視野で課題を捉えることが重要です。
内部監査結果を企業の利益向上につなげる
内部監査によって得られた指摘事項は、最終的に企業の利益や成長につながるよう活用する必要があります。例えばコスト削減や売上拡大につながる業務改革が可能か、損失リスクを下げて経営の安定化に寄与できるかなど、内部監査結果を具体的なアクションプランに落とし込むのが理想です。
具体的な改善策まで提案して実行を促す
「何が問題か」を指摘するだけでは、改善へのモチベーションが湧きにくいケースもあります。現場が受け入れやすい具体的な手段や優先順位を示し、一緒に解決策を考えることで社内の協力を得やすくなります。実施後のフォローアップも含め、継続的に支援する姿勢が大切です。
まとめ:内部監査を経営に活かし、企業を成長させよう
内部監査は不正の発見やリスク管理だけではなく、企業が新たな成長機会を見いだすための強力なツールです。社内の業務プロセスを客観的な視点で見直し、改善策を立案・実行することで、コスト削減や収益増、組織力の向上に結びつけることができます。
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内部監査の本質的な役割は、単に不正の発見や予防にとどまりません。現場の業務を客観的に見直し、改善策を提案することで、企業全体の効率化やリスク低減につながります。
私たちが実際に監査現場を回ると、リスク管理だけでなく“業績の底上げ”にも直結するケースが多いと感じています。