監査
内部監査チェックリストの作り方は?項目例と活用ポイントを徹底解説

企業の内部統制やリスク管理を強化する上で欠かせないのが「内部監査チェックリスト」です。
どのような項目を盛り込むか、何を基準に作成・活用すればよいのか。専門家視点の知識が必要とされる一方で、誰が読んでも実務に落とし込みやすい情報整理が大切になります。
そこで本記事では、内部監査チェックリストの基本から作成ステップ、運用で意識すべきポイントまでをわかりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
Contents
1. 内部監査チェックリストとは?準備に欠かせないその理由

内部監査においてチェックリストは、業務の抜け漏れを防ぎ、監査の精度を高めるための重要なツールです。ここでは、チェックリストを導入する意義を整理しつつ、作らない場合に発生するリスクについても確認していきます。
まずは、チェックリストの概要を理解し、その役割やメリットを把握しましょう。
※内部監査の全体像を先に押さえたい方は、以下の記事をご覧ください。
内部監査とは?基本の役割・目的から手順まで徹底解説
内部監査チェックリストの役割と目的
内部監査チェックリストは、組織内のルール遵守や業務手順の適切性を幅広く把握するための“網羅リスト”として機能します。具体的には、監査範囲に応じて必要な項目をまとめることで、内部監査人によって基準や判断がぶれないようにするのが目的です。
チェックリストを通して業務プロセスの見直し・改善点の発見がしやすくなるのも大きな特徴です。内部監査の結果をスムーズに報告・共有できるようになるなど、透明性と客観性を担保するのにも役立ちます。
チェックリストを活用するメリット
チェックリストを使うことで、監査内容を標準化しやすくなり、属人化を防げます。
内部監査人の経験値や主観に左右されにくくなるため、組織としての監査品質を一定レベルに保ちやすい点がポイントです。また、監査項目をあらかじめ整理しておけば、短い監査時間でも重要な箇所を確実に確認できるので、業務効率の向上も期待できます。
ミスや見落としを減らすことで内部監査の信頼性が高まり、経営層や各部署とのコミュニケーションも円滑になるでしょう。
チェックリストを使わない場合のリスク
一方で、チェックリストがない場合、内部監査人の知識や感覚に依存してしまうおそれがあります。
特定の担当者がいないと内部監査が進まない、問題を見落としてしまうなどのリスクが顕在化しがちです。また、内部監査結果の評価基準が曖昧になりやすく、担当者や部門によって判断基準に大きな差が出る可能性もあります。
結果的に改善活動が形骸化してしまうリスクが高まるため、組織として一貫した基準をもつためにもチェックリストの導入は欠かせません。
※現場ヒアリングのコツを知りたい方は、以下の記事も併せてご参照ください。
内部監査の質問例集:実践的なヒントと回答を引き出すコツ
2. 内部監査チェックリストの作成手順:基本的なステップとコツ

実際にチェックリストを作ろうとすると、どこから手をつければいいのか迷いますよね。
ここでは、初心者でも取り組みやすい基本的なステップを示しながら、それぞれの段階で押さえておきたいコツについて解説します。自社の業種・規模に合わせて柔軟にアレンジしながら進めてみてください。
チェックリスト作成の準備(監査範囲の確認)
まずは、何を監査の対象とするかを明確にしなければいけません。企業によっては法令順守が重視される場合もあれば、生産性やコスト管理など、別の指標が重要となることもあります。
ここでのポイントは、ゴールを設定すること。たとえばISO認証を取得したいのか、内部管理体制を強化したいのかによって監査範囲や優先順位が変わるので、社内のステークホルダーとよくすり合わせておきましょう。
監査項目の洗い出しと整理方法
監査範囲が決まったら、想定しうる項目をできる限り洗い出します。最初の段階では多くの項目が出てくるかもしれませんが、業務内容やリスクの大小に応じて優先度をつけ、不要なものは省いていくことが重要です。
具体的には、「ルール遵守」「業務プロセス」「リスク管理」といった大分類を設け、その下に細かいチェック項目を追加していくと整理しやすくなります。Excelやテンプレートを活用することで、作業の効率もアップするでしょう。
既存のテンプレート活用と自社向けカスタマイズ
内部監査チェックリストのひな形は、インターネット上や専門書籍などで数多く公開されています。はじめからすべてオリジナルで作ろうとすると負担が大きいため、まずは既存のテンプレートを参考にするのも一つの手です。
ただし、他社のテンプレートをそのまま流用すると、自社特有の業務や文化、リスク要因が十分にカバーされない可能性があります。基本的な枠組みだけ借りて、実際の業務フローや社内ルールに合わせて項目を追加・修正することが大切です。
3. 内部監査チェックリストに盛り込むべき主な項目例

次は、チェックリストを作成する際に代表的な項目として盛り込むべき内容を具体的に見ていきます。
ここでは、基本的なコンプライアンスから業務改善に活かすための観点まで、幅広く紹介します。自社に合った形で取捨選択しながら、自分たちに最適なチェックリストを組み立ててみてください。
ルール遵守など基本的なチェック項目
まずは、社内ルールや法令をしっかりと守れているかどうかを確認する項目です。具体例としては、勤怠管理の適切性や情報管理のセキュリティ体制などが挙げられます。
ここでは「必ず守らなければならない基準」を明確にし、実際に証拠(ログや文書)をもとに確認する仕組みを入れることで、被監査対象者と内部監査人の認識齟齬を防ぎます。
業務プロセスの有効性を確認する項目
ルール遵守だけでなく、業務フローが効率的に回っているかどうかも重要なチェックポイントです。例えば、製造業の場合は生産計画から出荷までの流れに無駄がないか、IT業界なら開発プロセスや運用保守の手順に問題がないかを確認します。
注目すべきは「現場で運用されている実態」と「理想的なプロセス設計」が一致しているかどうか。改善の余地がある場合は、その場でメモしておき後から検討できるようにするとよいでしょう。
改善点を見つけるためのチェック項目
内部監査は、単に問題を発見するだけでなく、会社をより良い状態へアップデートするための機会でもあります。そのため、「このプロセスをどう改善できるか?」といった観点を持つ項目を設けておくと効果的です。
たとえば顧客満足度の向上策や、事故・クレームの未然防止策など、将来にわたって組織を強くするヒントを得るためのチェックポイントを設定しましょう。こうした視点を持つことで、内部監査が形骸化するのを防ぐことにもつながります。
4. 内部監査チェックリスト活用上の注意点:改善につなげるには

チェックリストを導入しても、「作っただけ」「形だけの監査」で終わってしまうケースも少なくありません。
ここでは、せっかく作成したチェックリストを組織の成長や継続的な改善へと結び付けるための注意点やコツを整理します。
チェックリストの定期的な見直しと更新
チェックリストは作って終わりではありません。事業環境の変化や法改正、組織構造の変更などにより、監査すべきポイントは刻々と変化します。定期的に項目を見直し、新たなリスクや問題点を拾えるようアップデートしましょう。
たとえば、半期ごとや年度ごとに、関係部署を交えてレビューを行うだけでも効果的です。状況に即した修正を継続することで、常に実効性の高いチェックリストを保てます。
内部監査結果を改善策につなげるフィードバックを行う
内部監査は、監査結果をフィードバックし、部門や担当者と改善策を協議・実行するまでが一連の流れです。チェックリストで洗い出した問題点やリスクを共有し、解決策を話し合うことで、初めて監査が機能したと言えます。
内部監査チームだけでなく、現場スタッフや管理職を巻き込みながら具体的なアクションプランを策定し、進捗をモニタリングする仕組みづくりが重要です。
形骸化させない運用で継続的に効果を発揮
チェックリストを形だけ運用していては、組織としての成長に結びつきません。形骸化を防ぐポイントとして、内部監査の重要性を経営層や全社員が共有すること、そして内部監査の結果を経営判断に活かすプロセスを確立することが挙げられます。
たとえば、定期的な内部監査結果報告会で経営層や現場が直接意見交換する場を設けたり、KPI(重要業績評価指標)に内部監査結果を反映させる取り組みが効果的です。こうした仕組みがあれば、チェックリストが常に組織の改善につながるツールとして機能し続けるでしょう。
内部監査チェックリストは、一度作ればずっと使える万能ツールではなく、常に組織の変化に合わせて育て続けるものです。
OAGビジコムでは、貴社の業務や体制に適合するチェックリストの整備も承りますので、効果的な内部監査を実施したい場合はぜひお問い合わせください。
まとめ:内部監査チェックリストを活用して継続的改善を進めよう
内部監査チェックリストは、重要な監査ポイントを整理し、抜け漏れを防ぐための強力なツールです。企業ごとの業務内容やリスクに合わせてカスタマイズし、定期的に見直すことで、リスクの早期発見や業務効率の向上、さらには企業体質の強化につながります。
形だけの運用で終わらせるのではなく、内部監査結果を基に改善活動を継続していくことが、組織の持続的な成長に不可欠です。自社に最適化されたチェックリストを活用し、内部監査の効果を最大限に引き出していきましょう。
もしチェックリストの作成や運用方法でお困りの際は、ぜひOAGビジコムまでご相談ください。貴社の状況や課題に合わせた最適なチェックリストを作成したうえで、内部監査を支援させていただきます。
作成時に一番大事なのは、まず“設定したゴールに対して最終的にどういうリスクを洗い出したいか”を明確にすることです。漠然と項目を並べると、結局どこを重点的に見るべきか分からなくなってしまいます。